実績報告とは|事業再構築補助金を確実に受け取るために欠かせない、交付後手続き

実績報告とは|事業再構築補助金を確実に受け取るために欠かせない、交付後手続き

中小企業などの新分野展開、業態転換、業種転換といった思い切った挑戦を支援する「事業再構築」。今回は、そんな事業再構築の交付完了後におこなわなくてはならない、「実績報告」にクローズアップしていきます。

本記事では補助金採択後の流れのおさらいから具体的な実績報告の方法、最低限おさえておきたい注意ポイントなどを解説していきます。実績報告書は、せっかく採択された補助金を、確実に受け取るために必要不可欠な手続きです。
これから事業再構築補助金の申請を検討している事業者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

なお、手続きに関する詳細な内容は事業再構築補助金の事務局が公開している「実績報告書等作成マニュアル」をご確認ください。

 

<目次>
事業再構築補助金の実績報告とは
提出前にあらかじめ把握しておくべきこと
・1.必要資料が膨大
・2.ルールが細かく、差し戻しが多い
事業再構築補助金の採択後の流れ
実績報告の必要書類
・1.補助対象経費の区分にかかわらず必要な書類
・2.補助対象経費の区分ごとに必要な書類
実績報告書の作成方法
・STEP01:書類を日付順に並べる
・STEP02:全ての書類の右上に番号をつける
・STEP03:書類をPDF化する
・STEP04:提出に必要な様式を作成する
・STEP05:jGrantsで申請する
・STEP06:実地検査の要請があれば対応
実績報告書作成時の注意点
・中古品を購入した場合には3者以上の相見積書が必要
・クレジットカード払いの場合には追加書類が必要
・社内で立替払いを行った場合にも追加資料が必要
まとめ

事業再構築補助金では、採択されて全ての設備やシステムの発注、導入、支払などが完了した後、その実際の実施結果を「補助事業実績報告書」という資料として提出する義務があります。

事業報告書をもとに対象事業実施や支払が確認されたのちに補助金額が確定し、支給を受けることが可能となります。

つまり事業再構築補助金の実績報告とは、正式な補助金額を決定するための“証明”のようなものであるといえます。報告内容に不備がある・書類が不足している・期限内に提出されないなどの場合は、補助金の減額や補助対象から外れる可能性もあるため、事前に報告に必要な手続きや書類をしっかりと把握しておくのが良いでしょう。

1.必要資料が膨大

実績報告には想像以上に膨大な資料が必要となります。その数は、補助対象の設備1つ購入するのに15枚程度の資料が求められるほどです。(具体的に必要な資料についてはこちら)例えば通常の取引ではあまり発行されない見積依頼書、社内で準備できる経理関連の書類以外にも取引先に依頼して発行してもらう書類や事業実施中の現場の写真など、さまざまな書類が求められます。

報告書の提出期限は、補助事業の完了日から起算して30日を経過した日、もしくは補助事業完了期限日のいずれか早い日となっています。期限内に実績報告が提出されない場合は交付決定取消もあり得るため、常に期限を意識した段取りが必要です。直前になって慌てることの無いよう、準備できる書類から早めに用意しておきましょう。

2.ルールが細かく、差し戻しが多い

さらに資料作成には細かなルールがあるため、ルールの理解から「jGrants」(申請に使用する電子申請システム ※後述します)での提出まで1~2週間程度かかることも少なくありません。

ルールに沿っていない箇所があれば、事務局から修正の差し戻しが入ります。しかしマニュアルに記載されていない注意事項があるため、その差し戻し率は非常に高く、ほとんどが複数回の差し戻しをされているのが現状です。

そして初回の事業報告書提出から最初の差し戻しまで、1~2か月程度の期間を要します。そこで気になるのが、差し戻し対応により実績報告完了日が期限を過ぎた場合どうなるのか、という点。実際は、原則報告書提出が期限内に収まっていれば問題ないようです。

とはいえ、できるだけその後のやりとりの手間を省くためにも差し戻し回数は最小限におさえたいところ。マニュアルや手引きを熟読した上で、不明な点があれば早い段階で事務局へ問い合わせておくと安心です。

どうしても補助金を採択されることが目標になってしまいがちですが、補助金を確実に手にするために重要なのはここからです。以下で採択後の流れをしっかりと把握しておきましょう。

事業再構築補助金の採択後の流れ

事業類型ごとで定められた補助事業期間内に、実績報告書の提出までを完了させる必要があります。発注や納入が遅れると、報告書の作成期間も短くなってしまうため、計画的に書類の準備を進めておくようにしましょう。

ここまで、報告書作成前に把握しておくべき情報や、採択後の流れの全体像について解説してきました。
では、実際に必要な書類にはどのようなものがあるのでしょうか。以下で確認していきましょう。

1.補助対象経費の区分にかかわらず必要な書類

建物費や機械装置・システム構築費などの補助対象経費区分に関係なく、以下2つの書類は必ず提出しなくてはなりません。
  • 出納帳のコピー(補助事業に要した経費の出納状況が分かる部分)
  • 通帳のコピー(補助事業に要した経費の出金が確認できる部分と、金融機関名・支店名・種別・口座番号が分かる部分)

2.補助対象経費の区分ごとに必要な書類

補助対象経費の区分ごとで、必要な書類は変わってきますが、主な必要書類は以下の通りです。

詳しい内容は後述しますが、全体的に発注書・見積書・請求書を作成する側の注意事項が多いため、実施報告書の作成手順を参考に事前共有・依頼に漏れがないようにしっかりした準備が必要です。詳しい書類はこちらから確認し、不明な点は事務局へ問い合わせてください。

書類の不備があると事務局から差し戻しされ、完了まで余計に時間がかかってしまいます。できるだけ差し戻しを少なくするよう書類を作成しましょう。

見積依頼書

見積書

相見積書(単価が50万円以上のシステムや機械などを導入するとき)※1

業者選定理由書(相見積もりをせず、1社のみから選定した場合)※1

契約書

発注書・受注書(見積書と同じ金額・項目の記載が必要)

請求書・領収書(発注書と同じ内容での作成が必要)※2

検収書(赤書きで、検収日・従業員のサインが入った納品書などでも可能)

事業をおこなっている現場や設備などの写真

※1:相見積書と業者選定理由書については、交付決定(計画変更)時と内容に変更がない場合は、見積書のみの提出となります。

※2:必要となるのは今回の補助金に係る経費の請求書のみです。他の経費が入っている場合、差し戻しとなる可能性があります。「振込先の口座」が明記されていない場合も事務局から指摘される可能性が高いため、あらかじめ請求書作成先には振込先を明記するよう依頼しましょう。

事業再構築補助金の実績報告書作成には、まず証拠書類を事業の流れに沿って時系列にまとめ、PDF化していく必要があります。その際に原本がある書類は原本を保存するほか、全ての書類の右上に管理番号を記すなど、いくつかの気をつけるべきポイントがあります。一つずつ見ていきましょう。

STEP01:書類を日付順に並べる

見積依頼日→見積発行日→発注日→契約日→納品日(検収日)→請求日→支払済日

証拠書類を上記のような順序で並べていきます。隣り合う書類の日付は、前の書類の日付の同日以降である必要があります。

「発注書の日付の同日以降に契約書を締結している」「請求書の日付の同日以降に支払いをおこなっている」といったように、書類の日付(順序)に整合性が取れているかをチェックしましょう。

STEP02:全ての書類の右上に番号をつける

経費の区別が一見してわかるよう、書類の右上に番号を記していきます。この番号は手書きでも問題ありません。

機械を4台導入したときには、各機械に対して「機-1」・「機-2」・「機-3」・「機-4」と番号を記していくため、全部で書類の束が4つできることになります。(「機-1」と記した束が1つ、「機-2」と記した束が1つ…など)

STEP03:書類をPDF化する

番号を記した証拠書類ごとにPDFファイルを作成し、以下のルールに沿ったファイル名をつけておきます。
  • Rから始まる受付番号_書類の番号_書類の内容 
例:「R2xxxZxxxxx_機-1_発注書」「R2xxxZxxxxx_広-2_振込金受領書」など

STEP04:提出に必要な様式を作成する

補助金の電子申請システム「jGrants」にログイン後、以下の書類をダウンロードします。それぞれ、背景色が黄色(必須項目)白色(任意項目)の入力欄に必要項目を入力し、様式を作成していきます。

  • 補助事業実績報告書(様式第6の別紙1及び別紙4)※別紙4はクラウドサービス利用費を計上する場合のみ
    事業計画名や実施期間、事業概要などの基本情報を記入します。
  • 経費明細表(様式第6の別紙2)
    経費について、予算額と実績額を記入します。

 ※以下はイメージ図

  • 費目別支出明細書(様式第6の別紙3)
    機械購入などに支払った金額や支払い先を細かく記入します。
  • 取得財産等管理台帳(様式第7)
    補助事業によって取得、または効用が増加した単価50万円以上(税抜)の物件(財産)について入力します。

各書類の詳しい作成方法・記入例はこちらにてご確認ください。(10ページ目以降)

STEP05:jGrantsで申請する

「jGrants」とは、デジタル庁が運営する、国や自治体の補助金の電子申請システム。補助金の申請手続きが24時間365日可能で、申請後もマイページから申請状況確認をすることができます。

事業再構築補助金の実績報告申請は郵送では受け付けておらず、上記のjGrantsの利用が必須となります。申請に必要な書類準備と様式の作成が完了したら、ただちに電子申請をおこないましょう。

STEP06:実地検査の要請があれば対応

書類に記載した内容と実際の状況が一致しているか、きちんと機能しているかなどを確認するために、報告申請後でも必要に応じて、事務局の検査員が現地を訪問することがあります。この「実地検査」の実施が決定した場合、事業者は必ず協力する必要があるため、一応念頭においておきましょう。

実地検査にて申請内容に問題なしとの判断がなされたら、そこで補助金の額が確定します。正式な「確定通知書」を確認後、jGrants上で「精算払い請求書」を提出すれば、補助金が振り込まれるという流れです。

補助対象設備の購入について、「中古品購入」「クレジットカード払い」「社内で立替払い」これらのアクションをおこなった場合には、実績報告書作成に注意すべき点がいくつか追加されます。

中古品を購入した場合には3者以上の相見積書が必要

中古品購入の場合、型式や年式が記載されており、性能が同程度であると確認ができる3者以上の相見積書の提出が必須です。 (業者選定理由書は不可)

クレジットカード払いの場合には追加書類が必要

事業再構築補助金では、金銭の支払いを銀行振込でおこなうこととされています。しかし経理処理の都合上、やむを得ない事情によりクレジットカードなど銀行振込以外の方法で支払う場合は、事前に事業再構築補助金事務局へ相談が必要です。また、実績報告時に以下の追加書類の提出が求められます。
  • カード会社発行の、クレジットカード利用明細書(補助事業期間中に引き落としが確認できる場合のみ承認)
  • クレジット利用の旨を記載した領収書(領収書が無い場合は、カード利用控えでOK)
  • カード利用金額の引き落としが分かるもの(通帳の該当部分のコピーなど)
また、クレジットカードを利用することでポイントがついた場合、補助対象経費から差し引く必要があります。付与されたポイントと、1ポイント当たりの還元率が分かる書類の提出も必要です。

社内で立替払いを行った場合にも追加資料が必要

個人名義で一時的に支払いをおこなう「立替金」が発生した場合、補助事業実施期間内に個人に立替分の支払いをおこなう必要があります。また、実績報告時には以下の書類の提出が必須です。
  • 会社から個人に支払いがおこなわれたことがわかる通帳のコピー
  • 会社から個人口座に振込みをおこなったことがわかる支払証明書

ここまで、補助金採択後の流れや実績報告の具体的な申請方法、最低限おさえておきたい注意ポイントなどを解説してきました。

実績報告書はせっかく採択された補助金を確実に受け取るための、最重要手続きです。事業を適切におこなっていることが、第3者から見ても明らかとなるよう証明する必要があります。そのため必要な書類やルールが多く、はじめは戸惑うことが多いかもしれません。事務局との間でやりとりがスムーズにいかず、どうしていいのかわからなくなってしまう場面もあるでしょう。

株式会社樫乃屋では、補助金や助成金申請のみならず、実績報告書作成・申請のサポートもおこなっています。様式の記入方法がいまいち理解できず時間がかかりすぎてしまう、細かなルールがありすぎて混乱してしまう人は、ぜひご相談ください。