2025年版 IT導入補助金とは|類型や補助額、申請方法を解説

事業を営む上で、資金調達手段として押さえておきたい「補助金」。

「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」など、さまざまな種類がある中でも今回は、自社のIT化・デジタル化を進める際に有効な「IT導入補助金」について取り上げます。

顧客管理ツールや営業支援ツール、テレワークに向けたシステム構築など、非常にさまざまなツールの自社導入に活用できるIT導入補助金ですが、

補助対象となるツールはあくまでも、「“IT導入支援事業者”が取り扱っているツールのみ」という注意点も。

本記事ではそんな「IT導入補助金」に関する注意点に加え、類型ごとの補助額や補助率、申請に向けたフローなどを、2025年の最新情報とともにまとめて解説していきます。

 

自社のIT化・デジタル化に向けたITツールの導入を検討している事業者の方、さらなる事業拡大の有効なツールを探している事業者の方は、ぜひ本記事を参考に、補助金の申請を検討されてはいかがでしょうか。

<目次>
1. IT導入補助金とは
・補助対象について
2. IT導入補助金の類型・補助額
①通常枠
②インボイス枠(インボイス対応類型)
③インボイス枠(電子取引類型)
④セキュリティ対策推進枠
⑤複数社連携IT導入枠
3. 申請までの流れ
①「IT導入支援事業者の選定」「ITツールの選択」
②「gBizIDプライム」アカウントの取得・「SECURITY ACTION」の実施
③「みらデジ経営チェック」の入力
④交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)
⑤ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施)
⑥事業実績報告
⑦補助金交付
⑧事業実施効果報告
4. まとめ

 

IT導入補助金とは

 

IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者などに対し、それぞれの課題やニーズに沿ったITツールの導入を支援するための補助金です。
具体的には、

「顧客情報を効率的に管理したい」

「バックオフィスの作業の無駄を省きたい」

「売上・在庫をデジタルでリアルタイム管理したい」

などのニーズに応えるITツールを、自社に導入する場合に有効です。

IT導入補助金の「ITツール」とは、パッケージソフトの本体費用、クラウドサービスの導入・初期費用、保守サポートやマニュアル費用など幅広く指します。

ITの導入費用に頭を悩ます事業者にとって非常にありがたい制度と言えるでしょう。

 

IT導入補助金とは

補助対象について

そんなIT導入補助金ですが、どんな事業者でも対象となるわけではありません。
補助対象になるには、主に次の要件を満たす必要があります。※以下、通常枠の場合

  • 日本国内で法人登記(法人番号が指定され国税庁が管理する法人番号公表サイトにて公表されていること)され、日本国内で事業を営む法人、または個人であること
  • 事務局が求める資料を事務局が別途定める期間内に、事務局が指定する方法で提出できること
  • 次のいずれかに該当する者でないこと ※中小企業の定義は、こちらのp.5の表に掲げる通り
(1)発行済株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業・小規模事業者等
(2)発行済株式の総数または出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業・小規模事業者等
(3)大企業の役員または職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業・小規模事業者等
(4)発行済株式の総数または出資価格の総額を(1)~(3)に該当する中小企業・小規模事業者等が所有している中小企業・小規模事業者等
(5)(1)~(3)に該当する中小企業・小規模事業者等の役員または職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業・小規模事業者等
(6)確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業・小規模事業者等
※なお、大企業とは、中小企業・小規模事業者等以外の者で事業を営む者を言う。ただし、中小企業投資育成株式会社法に規定する中小企業投資育成株式会社・投資事業有限責任組合契約に関する法律に規定する投資事業有限責任組合のいずれかに該当する者については、大企業として取り扱わないものとする。
  • 経済産業省または中小機構から補助金等指定停止措置または指名停止措置が講じられている事業者ではないこと
  • 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条各項に規定する営業を営む事業者ではないこと ※ただし、旅館業法(昭和23年法律第138号)第3条第1項に規定する許可を受け旅館業を営むもの(風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第6項に規定する店舗型性風俗特殊営業を営むものを除く)を除く
  • 申請する中小企業・小規模事業者等またはその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと。反社会的勢力との関係を有しないこと。また、反社会的勢力から出資等資金提供を受ける場合も対象外とする
 

IT導入補助金の類型・補助額

IT導入補助金には、目的に応じた5つの枠組みがあります。
自社の状況がどの枠にあてはまるのか、あるいはどの枠が自社にとって有効なのかを確認・検討し、申請していきましょう。

上記の枠組みをそれぞれ解説していきます。

①通常枠

「業務のデジタル化」を目的としたソフトウェアや、システムの導入をしたい場合に有効な類型です。
具体的には、CRM(顧客管理)ツールSFA(営業支援)ツールといった業務プロセスに関するものに加え、各種データ連携ツールや分析ツールなどが対象となります。

2025年版では、ITツール導入後の運用や、活用の定着を支援するための「活用支援」が補助対象として追加されました。

これにより、ITツールを導入して終わりではなく、それを効果的に活用して成果を上げるサービス(活用コンサルティング)の補助も受けられます。

事業者は、ITツール導入後にネックとなっていた運用負担や、社内での定着の課題を解決でき、より効率的な業務を実現できるでしょう。

<導入例>

宿泊業:クラウド型ホテル管理システムを導入することで、遠隔地からリアルタイムで空室管理・データ分析が可能になり、作業効率アップ
卸売業:通販管理業務の受注処理から伝票発行、販売管理までトータルでDX化するITツール導入で、業務効率化と売上アップを実現

その他:タイムカードによる勤怠管理のため、本社出勤後の現場移動、帰社後の帰宅が必要であったところ「勤怠・労務管理ツール」の導入により出先からの打刻が可能に

通常枠は、導入するITツールが効率化できる業務上のプロセスをいくつ保有するかによって、補助額が2段階に分かれています。

1~3プロセスの場合は5万円以上150万円以下4プロセス以上の場合は150万円以上450万円以下で、補助率は1/2以内

ただし、2025年版から、以下に該当する事業者は、補助率が2/3に引き上げられます。

地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員の数が、全従業員の30%以上であることを示すこと

 

・その従業員の雇用期間が3ヶ月以上継続していること

②インボイス枠(インボイス対応類型)

インボイス制度下において、ITツール等を導入し、インボイス制度に対応した企業間取引の推進を目的とした類型です。会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフトから、PCやタブレット、プリンターなどのハードウェアまでを補助対象としています。

ソフトウェアだけでなく、ハードウェアも対象経費として認められており、補助金では珍しく、かつ人気の高い類型です。

※ITツール(ソフトウェアの導入が必須で、ハードウェア単体では申請できません。)

 

補助額はソフトウェアの場合、導入するITツールが「会計」「受発注」「決済」の機能を1機能以上有する時50万円以下(補助率は、中小企業で3/4以内・小規模事業者で4/5以内)2機能以上有する時補助率2/3以内50万円超350万円以下となります。

一方ハードウェアの場合、PC・タブレットなどで10万円以下、レジや券売機で20万円以下、どちらも補助率は1/2以内となっています。

2025年版は、①通常枠と同様に、ITツール導入後の運用や活用の定着を支援する「活用支援」が補助対象に追加されました。

これにより、ツールを導入して終わりではなく、それらを効果的に活用して成果を上げるサービス(活用コンサルティング)の補助も受けられます。

 

事業者は、ツール導入後の運用負担、社内での定着の課題を解決でき、より効果的な業務を実現できます。

③インボイス枠(電子取引類型)

取引関係の中の発注者側の主導で、インボイス制度に対応したITツール(受発注ソフト)を導入し、取引先(受注者)の企業に対してインボイス対応を促す枠です。

中小企業・小規模事業者が申請する場合は2/3以内の補助率、大企業が申請する場合は1/2以内の補助率で、補助額は共に(下限なし)~350万円以下となっています。

 

インボイス枠(電子取引類型)は、前回2024年のIT導入補助金から変更点は特にないようです。

④セキュリティ対策推進枠

昨今高まるサイバー攻撃のリスクを低減するための、セキュリティ対策を強化する支援類型です。

サイバーセキュリティお助け隊サービス利用料※(最大2年分)として、5万円以上150万円以下が補助額となっています。補助率は中小企業が1/2以内。

2025年版では小規模事業者に対して2/3の補助率が追加されました。

これにより、小規模事業者もサイバーセキュリティ対策を導入しやすくなりました。

(独)情報処理推進機構(IPA)「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載され、IT導入支援事業者によりITツール登録されたサービスのみ申請可能

 

 

⑤複数社連携IT導入枠

商店街など、複数の中小企業・小規模事業者が連携して、ITツールの導入やインボイス制度への対応を支援する枠です。

2025年版は、①通常枠・②インボイス枠(インボイス対応類型)と同じく、ITツール導入後の運用、活用の定着を支援する「活用支援」が補助対象に追加されています。

そのため、ツールを導入後に効果的に活用して成果を上げるサービス(活用コンサルティング)の補助を受けられます。

事業者は、ツール導入後の運用負担、社内での定着の課題を解決でき、より効果的な業務を実現できます。

 

補助額・補助率について詳しくはこちらをご確認ください。

 

申請までの流れ

ここまで、IT導入補助金の類型や補助額について解説しました。
申請したい類型が決まったら、次はいよいよ申請です。ここからは申請をおこなう前に確認すべきことや大まかな申請の流れを解説していきます。

① IT導入補助金を理解する

まず、ざっとでいいのでIT導入補助金の公募要領を読み、補助事業についての理解を深めましょう。

②「gBizIDプライム」アカウントの取得・「SECURITY ACTION」の実施

「gBizID」ホームページより、gBizIDプライムアカウント(ID・パスワードなど)の取得をおこなっておきましょう。

なお、gBizIDプライムアカウントID発行までの期間は、おおむね2週間となっているため、早めの申請手続きが重要です。

 

また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の宣言が必要になります。この宣言は、中小企業・小規模事業者等自らが、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度で、「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言する事を要件としています。詳しくはこちらからご覧ください。

③「IT導入支援事業者の選定」「ITツールの選定」

補助金の交付申請をおこなう前に、まずは自社の業種や事業規模、経営課題に沿って、IT導入支援事業者と導入したいITツールを選定しなくてはなりません。
IT導入補助金で申請できるツール、つまり自社に導入できるツールはあくまでも「“IT導入支援事業者”が取り扱っているツールのみです。
したがって、気に入ったツールを自由に選択できるわけではないという点だけ念頭に置いておきましょう。

IT導入補助金申請における注意ポイント

IT導入支援事業者・ITツール(コンソーシアム含む)検索こちらからおこなえます。

④ 交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)

IT導入支援事業者との間で商談を進め、交付申請の事業計画を策定します。
この時、IT導入支援事業者側が、導入するITツール情報・事業計画値を入力する必要があります。その後、中小企業・小規模事業者等の交付申請を以下の流れで行います。

※補助金交付申請の受付開始は、2025年3月末を予定

(1)IT導入支援事業者から『申請マイページ』の招待を受け、代表者の氏名等の申請者基本情報を入力

(2)交付申請に必要となる情報入力・書類添付をおこなう

(3)IT導入支援事業者が、導入するITツール情報・事業計画値を入力

 

(4)『申請マイページ』上で、入力内容の最終確認をした後、申請に対する宣誓をおこない事務局へ提出

⑤ 交付決定

 

交付申請内容の審査が完了すると、交付決定の通知がされます。通知を受けた申請者は補助事業者となり、補助事業を開始することができます。

⑥ ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施)

交付申請を完了し、事務局から「交付決定」を受けた後に、ITツールの発注・契約・支払いなどを実施します。

 

<注意点>交付決定前に発注・契約・支払い等をおこなった場合は、補助金の交付を受けることができません。

⑦ 事業実績報告

補助事業の完了後、実際にITツールの発注・契約、納品、支払いなどをおこなったことが分かる証憑を提出します。証憑の提出は、以下の流れで実施しましょう。

(1)中小企業・小規模事業者などが「申請マイページ」から事業実績報告に必要な情報の入力および証憑の添付をおこない、事業実績報告を作成する
(2)事業実績報告が作成された後、IT導入支援事業者が内容の確認および必要情報の入力をおこなう
(3)最終確認後、中小企業・小規模事業者等が事務局に事業実績報告を提出する

※実績報告について、詳しくはこちらをご覧ください。
実績報告とは|事業再構築補助金を確実に受け取るために欠かせない、交付後手続き

<注意点>事業が適正におこなわれなかった場合や、実績報告期間中に正しく実績報告がおこなわれなかった場合、補助金の交付を受けることができません。実績報告が提出されるまでに、すべてのITツールの「事業」が完了し、ITツールの利用・運用が開始されている必要があります。

⑧ 補助金額の確認・承認

補助事業者は、「申請マイページ」から確定検査の結果・補助金交付決定額を確認し、内容に相違がなければ承認をおこないます。承認にはSMS認証が必要です。

 

<注意点>承認が行われない場合、補助金が交付されません。確定検査の内容に相違が無い場合、必ず承認をおこなってください。

⑦補助金交付

事業実績報告が完了し、補助金額が確定すると「申請マイページ」で補助額を確認できるようになります。その内容を確認した後に補助金が交付されます。

⑨ 事業実施効果報告

事業実施効果報告は、定められた期限内に補助事業者が「申請マイページ」より必要な情報を入力し、IT導入支援事業者の確認を経て、提出します。

 

まとめ

ここまで、2025年版のIT導入補助金の概要をはじめ、類型ごとの補助額や補助率、申請に向けたフローなどを解説してきました。

顧客管理ツールや営業支援ツール、テレワークに向けたシステム構築など、さまざまなITツールを自社に導入できるIT導入補助金。作業の無駄を省き、業務プロセスの変革、データの蓄積もできるITツールは、企業を成長させる大きな起爆剤になるでしょう。

補助金申請は、申請書類や細かなルールの多さに、戸惑うことが多いかもしれません。どの枠組みの申請が最適なのか判断できず、困ってしまう場面もあるでしょう。

株式会社樫乃屋では、IT導入補助金の申請サポートをおこなっています。

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