一時支援金とはどんな補助金、給付対象や手続き方法はどうなるの?

 

1月に出された新型コロナウイルス感染拡大に伴う政府の緊急事態宣言で、売り上げが減少した中堅・中小企業や個人事業主に支給される一時支援金の申請受け付けが8日から全国で始まりました。

中堅・中小企業に最大60万円、個人事業主に最大30万円が支給される制度で、経済に対する緊急事態宣言の影響を最小限にとどめるのが狙いです。一時支援金の内容と支給を受けるのにどうすればいいのか、中小企業庁の資料から詳しく紹介します。

 

1 概要

給付対象になる事業者とならない事業者は?

 

給付対象となる事業者は資本金10億円未満または常時使用の従業員数2,000人以下の中堅・中小企業か、個人事業主で、緊急事態宣言による飲食店の時短営業や外出自粛の影響を直接受け、2021年1~3月の売り上げが2019年または2020年比で50%以上減少していることが条件になります。条件を満たす事業者であれば、業種や所在地は問われません。

例えば、秋田県にある中小企業が東京都の飲食店に食品を納入していたり、新潟県の個人事業主が埼玉県のカフェに飲料品を販売していたりするケースも認められます。

 

緊急事態宣言の解除府県も対象に

 

宣言地域外であっても、旅行関連業者などが宣言地域の外出自粛の影響を受けていれば申請を認められます。

ただし、大企業や地方自治体から時短営業の要請を受け、協力金支給対象となった飲食店、公共法人、宗教法人、風営法上の性風俗関連特殊営業として届け出義務のある事業者、政治団体は対象外です。

その一方で、時短営業の要請を受けていない昼間営業の飲食店は対象となります。緊急事態宣言は首都圏1都3県を除いて解除されましたが、宣言地域には栃木県、愛知県、岐阜県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県のすでに解除された7府県も含んでいます。

 

中小企業庁が給付対象となりうる事業者の具体例を紹介

 

中小企業庁がまとめた広報資料では、給付対象となりうる事業者の具体例を挙げています。

それによると、宣言地域の飲食店と取引がある事業者として、食品や飲料関係で酒造業者、食肉加工業者、水産加工業者、飲料業者などが考えられるとしています。

器具や備品関係では食器や調理器具などの販売業者、サービス関係では清掃事業者、廃棄物処理事業者、広告会社、ソフトウエア事業者、設備工事事業者などが想定されます。

このほか、業務用スーパー、問屋、農協、漁協、貨物運送事業者、農業・漁業生産者、器具・備品製造事業者なども給付対象になりうるとしています。

 

消費者向けサービスでも多様な事業者が対象に

 

主に対面で消費者向けに商品やサービスを提供する事業者としては、昼間営業の飲食店のほか、ホテル、旅館、タクシー、バス、旅行代理店、土産物店、博物館、水族館、動物園、遊園地、公衆浴場、美術館、映画館、カラオケ店、理美容室、クリーニング店、整体院、結婚式場、雑貨店、アパレルショップ、運転代行事業者などが挙げられます。

これらの事業者に商品やサービスを提供する食品加工業者や清掃事業者、業務委託契約のタクシー運転手、バスガイド、イベント出演者なども対象となりうるとしています。

ただ、宣言地域外でその地域のコミュニティー内の顧客だけと取引している小売店や生活関連サービス事業者は給付対象に含まれません。

 

給付額の算定方法と上限支給額は?

 

給付額の算定方法はまず、2021年の1~3月の間で2019年もしくは2020年比で売り上げが50%以上減少した月を任意で選択します。これが対象月です。次に基準年となる2019年または2020年の1~3月の合計売上高から選択した対象月の売上高の3倍を引きます。

例えば、対象月となる2021年2月の売上高が20万円、比較する基準年の2020年は1月が50万円、2月が40万円、3月が30万円の合計120万円だったとします。「120万円-20万円×3」の計算式に当てはめると、60万円という答えが出てきます。

上限額は中堅・中小企業が60万円、個人事業主が30万円。上の例の場合なら、申請したのが中堅・中小企業なら上限と同額の60万円、個人事業主なら上限を超えていますので、上限の30万円となるのです。店舗や事業単位ではなく、事業者単位での支給となります。申請受付期間は5月末までです。

 

2 書類準備

申請に必要な書類は確定申告書の控え、売上台帳など

 

申請には収受日付印を押した確定申告書の控え、2021年の対象月の月間売上が分かる売上台帳が必要です。

確定申告書の控えは2019年1~3月および2020年1~3月までをその期間に含むもので、e-Taxで申告した場合は受付日時の印字または受信通知メールの添付が求められます。確定申告義務がない場合や合理的な事由があるケースは、住民税申告書の控えで代用が可能です。

売上台帳にフォーマットの指定はありません。経理ソフトの抽出データやエクセルデータ、手書きの売上台帳でも構いません。

さらに、会社の代表者や個人事業主が自署した宣誓・同意書、通帳の銀行名や支店番号、支店名、口座種別、口座番号、名義人が確認可能な書類も必要になります。

ほかに中堅・中小企業は3カ月以内に発行された履歴事項全部証明書、個人事業主は本人確認書類を用意しなければなりません。審査状況によっては事務局から必要とされる書類が追加されることもあります。

申請に必要な書類

出典:中小企業庁資料から作成

 

反復継続した取引を示す書類は保存が必要

 

申請時に提出する必要はありませんが、保存しておかなければならない書類があります。申請者が給付要件を満たさない可能性がある場合などに事務局から提出を求められることも考えられますので、スキャンデータなど電子的な方法で7年間保存しなければなりません。

宣言地域内で時短営業の要請を受けた飲食店や卸売市場などその取引先と取引していた企業、個人事業主は、反復継続した取引があったことを示す帳簿書類や通帳が保存対象です。

宣言地域外の企業や個人事業主は自らの取引先と反復継続した取引を確認できる帳簿書類や通帳に加え、販売した商品やサービスが取引先を経由して時短営業の飲食店などに届いていることを示す青果物卸売市場調査などの書類や統計データが必要です。

時短営業を受けていない飲食店は営業許可証、営業時間を示す写真などの保存が求められます。

 

宣言地域で営業していることの証明も

 

個人顧客と継続した取引をしている場合は、帳簿書類や通帳のほか、商品やサービスの一覧表、店舗写真、賃貸借契約書・登記簿など宣言地域で事業をしていることが分かる書類が保存対象です。

宣言地域外にある旅行関連業者など外出自粛の影響を受けたケースは、営業する地域に2016年以降の旅行客の5割以上が宣言地域内から来ていることが分かるRESASなどの統計データ、宣言地域の個人顧客と反復継続して取引している場合は、顧客データや顧客台帳、自ら実施した顧客調査の結果を保存しておきましょう。

 

3 手続き

登録確認機関で事前確認を受けたうえで申請へ

 

まず、準備から申請までの大まかな流れを見ていきましょう。

給付要件を満たす場合、申請に必要な書類を準備し、ウエブサイトから申請するためのアカウント登録をしたうえで、商工会議所や税理士、金融機関など登録確認機関でテレビ会議や対面、電話などによる事前確認を受けなければなりません。

それが終わると申請者のマイページから申請し、事務局の審査を受けます。審査で問題がなければ、指定の金融機関に給付額が振り込まれます。不明な点があれば、事務局の調査が入ることもあります。

 

事前確認は取引先や会員になっている機関へ

 

登録確認機関は中小企業経営強化法で認定を受けた税理士、中小企業診断士、行政書士など認定経営革新等支援機関、商工会や商工会議所、農協、漁協、金融機関、中小企業団体中央会などこれに準じる機関、公認会計士、税理士法人、行政書士法人などです。

事務局のウエブサイトで公開していますが、会員となっている機関や取引先、顧問先などは事前確認作業が一部省略されることもありますから、そうした相手を選びましょう。事務局のウエブサイトでアカウントを登録後、事前確認の予約を入れましょう。

事前確認は書類の有無や法人名などの形式的確認で、審査ではありません。問題がなければ、事前確認通知番号を発行してくれます。事前確認がないと申請できません。

 

申請は事務局のウエブサイトから

 

事前確認が終わったら、事務局のウエブサイトからオンラインで申請します。

申請では、法人名、屋号、住所、氏名、連絡先、2019年1月から2020年3月までの法定帳簿に対応した月間事業収入など必要な基本情報を入力したうえで、提出を求められている書類を添付します。

自らが販売する商品が取引先を経由して宣言地域内の飲食店に届いているケースなどは、宣言地域内で時短営業を要請された飲食店名や法人番号、屋号、所在地、電話番号を入力しなければなりません。

添付書類はパスワードが設定されているものやぼやけたり、見切れたりしているものは受け付けてもらえません。申請画面で入力した内容と確定申告書や売上台帳が一致しないケースも問題です。申請前に不備がないか、しっかりとチェックしたうえで入力しましょう。

オンラインの申請が困難な場合は、全国で順次開設される申請サポート会場を予約し、利用すれば、スムーズに申請手続きができます。サポート会場は今後、順次増設される予定です。事務局のウエブサイトやコールセンターで確認しましょう。

 

合併した事業者やNPO法人は特例を適用

 

証拠書類や給付額の算定で特例が適用されるケースもあります。

2019年、2020年に新規開業した事業者、事業収入を比較する2つの月の間で他社と合併した事業者、2つの月の間に事業承継した個人事業主、2つの月の間に個人事業主から法人になった事業者、月当たりの売上高の変動が大きい事業者、2018年か2019年に罹災したことを示す証明書がある事業者は、給付額の算定に特例が適用されます。

連結納税をしている中堅・中小企業、NPO法人、公益法人は証拠書類や給付額算定が一般と異なります。特例申請の受付開始は19日からです。それまでに事務局などで詳細を確認しておきましょう。