
事業を営む上で、資金調達手段として押さえておきたい「補助金」。
「事業再構築補助金」「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」など、さまざまな種類がある中でも今回は、自社のIT化・デジタル化を進める際に有効な「IT導入補助金」について取り上げます。
顧客管理ツールや営業支援ツール、テレワークに向けたシステム構築など、非常にさまざまなツールの自社導入に活用できるIT導入補助金ですが、
補助対象となるツールはあくまでも、「“IT導入支援事業者”が取り扱っているツールのみ」という注意点も。
本記事ではそんな「IT導入補助金」に関する注意点に加え、類型ごとの補助額や補助率、申請に向けたフローなどを、2024年の最新情報とともにまとめて解説していきます。
自社のIT化・デジタル化に向けツールの導入を検討している事業者の方、さらなる事業拡大のため何か有効なツールは無いか探している事業者の方は、ぜひ本記事を参考に、補助金の申請をご検討ください。
<目次>
1. IT導入補助金とは
・補助対象について
2. IT導入補助金の類型・補助額
①通常枠
②インボイス枠(インボイス対応類型)
③インボイス枠(電子取引類型)
④セキュリティ対策推進枠
⑤複数社連携IT導入枠
3. 申請までの流れ
①「IT導入支援事業者の選定」「ITツールの選択」
②「gBizIDプライム」アカウントの取得・「SECURITY ACTION」の実施
③「みらデジ経営チェック」の入力
④交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)
⑤ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施)
⑥事業実績報告
⑦補助金交付
⑧事業実施効果報告
4. まとめ
IT導入補助金とは
IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者などに対し、それぞれの課題やニーズに沿ったITツールの導入を支援するための補助金です。
具体的には、「顧客情報を効率的に管理したい」「バックオフィスの作業の無駄を省きたい」「売上・在庫をデジタルでリアルタイム管理したい」などといったニーズに応えるツールを、自社導入する場合に有効な補助金。
IT導入補助金の「ITツール」とは、パッケージソフトの本体費用、クラウドサービスの導入・初期費用などを広く指しており、導入費用に頭を悩ませている事業者にとっては非常にありがたい制度であると言えます。

補助対象について
そんなIT導入補助金ですが、どんな事業者でも対象となるわけではありません。
補助対象になるには、主に次の要件を満たす必要があります。※以下、通常枠の場合
- 日本国内で法人登記(法人番号が指定され国税庁が管理する法人番号公表サイトにて公表されていること)され、日本国内で事業を営む法人、または個人であること
- 事務局が求める資料を事務局が別途定める期間内に、事務局が指定する方法で提出できること
- 次のいずれかに該当する者でないこと ※中小企業の定義は、こちらのp.5の表に掲げる通り
(1)発行済株式の総数または出資価格の総額の2分の1以上を同一の大企業が所有している中小企業・小規模事業者等 (2)発行済株式の総数または出資価格の総額の3分の2以上を大企業が所有している中小企業・小規模事業者等 (3)大企業の役員または職員を兼ねている者が、役員総数の2分の1以上を占めている中小企業・小規模事業者等 (4)発行済株式の総数または出資価格の総額を(1)~(3)に該当する中小企業・小規模事業者等が所有している中小企業・小規模事業者等 (5)(1)~(3)に該当する中小企業・小規模事業者等の役員または職員を兼ねている者が役員総数の全てを占めている中小企業・小規模事業者等 (6)確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年または各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小企業・小規模事業者等 |
- 経済産業省または中小機構から補助金等指定停止措置または指名停止措置が講じられている事業者ではないこと
- 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条各項に規定する営業を営む事業者ではないこと ※ただし、旅館業法(昭和23年法律第138号)第3条第1項に規定する許可を受け旅館業を営むもの(風俗営業等の規制及び業務の適正化に関する法律(昭和23年法律第122号)第2条第6項に規定する店舗型性風俗特殊営業を営むものを除く)を除く
- 申請する中小企業・小規模事業者等またはその法人の役員が、暴力団等の反社会的勢力でないこと。反社会的勢力との関係を有しないこと。また、反社会的勢力から出資等資金提供を受ける場合も対象外とする
IT導入補助金の類型・補助額
IT導入補助金には、目的に応じた5つの枠組みがあります。
自社の状況がどの枠にあてはまるのか、あるいはどの枠が自社にとって有効なのかを確認・検討し、申請していきましょう。
上記の枠組みをそれぞれ解説していきます。
①通常枠
「業務のデジタル化」を目的としたソフトウェアや、システムの導入をしたい場合に有効な類型です。
具体的には、CRM(顧客管理)ツールやSFA(営業支援)ツールといった業務プロセスに関するものに加え、各種データ連携ツールや分析ツールなどが対象となります。
<導入例>
宿泊業:クラウド型ホテル管理システムを導入することで、遠隔地からリアルタイムで空室管理・データ分析が可能になり、作業効率アップ
卸売業:通販管理業務の受注処理から伝票発行、販売管理までトータルでDX化するITツール導入で、業務効率化と売上アップを実現
その他:タイムカードによる勤怠管理のため、本社出勤後の現場移動、帰社後の帰宅が必要であったところ「勤怠・労務管理ツール」の導入により出先からの打刻が可能に
通常枠は、導入するITツールが効率化できる業務上のプロセスをいくつ保有するかによって、補助額が2段階に分かれています。
1プロセス以上の場合は5万円以上150万円未満、4プロセス以上の場合は150万円以上450万円以下で、どちらも補助率は1/2以内
②インボイス枠(インボイス対応類型)
インボイス制度下における企業間取引のデジタル化推進を目的とした類型です。会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフトから、PCやタブレット、プリンターなどのハードウェアまでを補助対象としています。
ソフトウェアだけでなくハードウェアも対象経費として認められるこの枠は、補助金としても非常に珍しく、人気の高い類型です。
補助額はソフトウェアの場合、導入するITツールが「会計」「受発注」「決済」の機能を1機能以上有する時に50万円以下(補助率は中小企業で3/4以内・小規模事業者で4/5以内)、2機能以上有する時に補助率2/3以内で50万円超350万円以下となります。
一方ハードウェアの場合、PC・タブレットなどで10万円以下、レジや券売機で20万円以下、どちらも補助率は1/2以内となっています。
③インボイス枠(電子取引類型)
取引関係における発注者が、インボイス制度対応のITツール(受発注ソフト)を導入し、当該取引関係における受注者である中小企業・小規模事業者などに対して無償でアカウントを供与して利用させる、といった場合を対象とした枠です。
補助額は、中小企業・小規模事業者が申請する場合は2/3以内の補助率、その他事業者が申請する場合は1/2以内の補助率で、(下限なし)~350万円以下となっています。
④セキュリティ対策推進枠
昨今高まるサイバー攻撃のリスクを低減するための、セキュリティ対策強化支援類型です。
補助額はサービス利用料の1/2以内で、5万円以上100万円以下となっています。
⑤複数社連携IT導入枠
取引関係における発注者が、インボイス制度対応のITツール(受発注ソフト)を導入し、当該取引関係における受注者である中小企業・小規模事業者などに対して無償でアカウントを供与して利用させる、といった場合を対象とした枠です。
補助額・補助率について詳しくはこちらをご確認ください。

①「IT導入支援事業者の選定」「ITツールの選択」
補助金の交付申請をおこなう前に、まずは自社の業種や事業規模、経営課題に沿って、IT導入支援事業者と導入したいITツールを選定しなくてはなりません。
IT導入補助金で申請できるツール、つまり自社に導入できるツールはあくまでも「“IT導入支援事業者”が取り扱っているツールのみ」です。
したがって、気に入ったツールを自由に選択できるわけではないという点だけ念頭に置いておきましょう。

IT導入支援事業者・ITツール(コンソーシアム含む)検索はこちらからおこなえます。
②「gBizIDプライム」アカウントの取得・「SECURITY ACTION」の実施
「gBizID」ホームページより、gBizIDプライムアカウント(ID・パスワードなど)の取得をおこなっておきましょう。
なおgBizIDプライムアカウントID発行までの期間は、おおむね2週間となっているため、早めの申請手続きが重要です。
また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の宣言が必要になります。この宣言は、中小企業・小規模事業者等自らが、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度で、「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言する事を要件としています。詳しくはこちらからご覧ください。
③「みらデジ経営チェック」の入力
2023年より、「みらデジ」における「みらデジ経営チェック」を交付申請前におこなった事業者であることが申請要件となっています。
みらデジの「新規利用者登録」画面より、gBizIDプライムアカウントを入力連携し、事業者登録をおこないます。そして、みらデジの事業者マイページへログインし、「みらデジ経営チェック」を実施してください。(gBizIDプライムアカウントとの連携は必須)
「みらデジ経営チェック」の画面で表示された項目全てに回答し、マイページ下部に「みらデジ経営チェック結果」が表示されたら、完了となります。
④交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)
IT導入支援事業者との間で話し合いを進め、交付申請の事業計画を策定します。
この時IT導入支援事業者側が、導入するITツール情報、事業計画値を入力する必要があります。
⑤ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施)
交付申請を完了し、事務局から「交付決定」を受けた終わったタイミングで、ITツールの発注・契約・支払いなどを実施します。
<注意点>交付決定前に発注・契約・支払い等をおこなった場合は、補助金の交付を受けることができません。
⑥事業実績報告
補助事業の完了後、実際にITツールの発注・契約、納品、支払いなどをおこなったことが分かる証憑を提出します。証憑の提出は、以下の流れで実施しましょう。
(1)中小企業・小規模事業者などが「申請マイページ」から事業実績報告に必要な情報の入力および証憑の添付をおこない、事業実績報告を作成する
(2)事業実績報告が作成された後、IT導入支援事業者が内容の確認および必要情報の入力をおこなう
(3)最終確認後、中小企業・小規模事業者などが事務局に事業実績報告を提出する
※実績報告について、詳しくはこちらをご覧ください。
「実績報告とは|事業再構築補助金を確実に受け取るために欠かせない、交付後手続き」
⑦補助金交付
事業実績報告が完了し、補助金額が確定すると「申請マイページ」で補助額を確認できるようになります。その内容を確認した後に補助金が交付されます。
⑧事業実施効果報告
事業実施効果報告は、定められた期限内に補助事業者が「申請マイページ」より必要な情報を入力し、IT導入支援事業者の確認を経て、提出します。
まとめ
ここまで、IT導入補助金の概要をはじめ、類型ごとの補助額や補助率、申請に向けたフローなどを解説してきました。
顧客管理ツールや営業支援ツール、テレワークに向けたシステム構築など、非常にさまざまなツールの自社導入に活用できるIT導入補助金。作業の無駄を省くだけでなく、業務プロセスの変革、データの蓄積もおこなうことができるITツールは、企業成長の大きな起爆剤になるでしょう。
補助金申請の際は、必要書類の多さや細かなルールに、はじめは戸惑うことが多いかもしれません。自社はどの枠組みで申請するのが適しているのか判断できず、困ってしまう場面もあるでしょう。
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