これから大型補助金である「事業再構築補助金」の募集が新たに始まります。この補助金は、これまでの三大補助金(ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金)と比較して何が違うのか気になる方も多いでしょう。そこでこの記事では、「事業再構築補助金」の特徴や三大補助金との比較についてまとめてみました。
三大補助金の特徴
まず、三大補助金(ものづくり補助金は、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金)について、それぞれの特徴を説明したいと思います。
はじめに事業再構築補助金とも性格が近いといわれる、「ものづくり補助金」について説明します。
中小企業・小規模事業者の設備投資を支援する
ものづくり補助金は、主に中小企業・小規模事業者を対象として、生産性向上のための設備投資を支援する制度です。
現在、中小企業などの小規模事業者は、働き方改革や賃上げ、インボイス導入などの制度変更に直面しています。それらに対応するために革新的なサービスの開発、試作品開発、生産プロセスの改善などを実施する企業を支援することがものづくり補助金の目的です。
具体例として下記のような活用例があります。
- 「食べられるクッキー生地のコーヒーカップ」の製造機械を新たに導入する
- オンラインビジネスへの転換を図る
補助上限1,000万円から1億円
ものづくり補助金は事業類型によって「一般型」、「グローバル展開型」、「ビジネスモデル構築型」に分かれます。それぞれの補助上限や補助率は下記の通りです。
事業類型 | 補助上限 | 補助率 |
一般型(通常枠) | 1,000万円 | 中小1/2、小規模2/3 |
一般型(低感染リスク型ビジネス枠) | 1,000万円 | 2/3 |
グローバル展開型 | 3,000万円 | 中小1/2、小規模2/3 |
ビジネスモデル構築型 | 1億円 | 大企業1/2、上記以外2/3 |
「一般型」は、これから新製品や新サービス開発、生産プロセスの改善を図るために必要な設備投資や試作開発を支援するものです。
また、一般型には「通常枠」に加えて、2021年から「低感染リスク型ビジネス枠」が加わりました。社会経済の変化に対応してビジネスモデルを転換するための投資への支援を実施します。
「グローバル展開型」は海外事業の拡大や強化のための設備投資を支援します。「ビジネスモデル構築型」は30社以上の中小企業に対して、革新性、拡張性、持続性を有するビジネスモデル・事業計画の策定のための支援プログラムの開発や提供を支援するのが目的です。
小規模事業者持続化補助金の特徴
続いて、小規模事業者持続化補助金について説明いたします。
制度変更に対応するための経費を支援する
小規模事業者持続化補助金は、これから企業が直面する制度変更に対応するため、小規模事業者が「販路拡大」などに取り組む際の経費の一部を補助する制度です。地域にとって重要な存在である小規模事業者を支援して、生産性の向上と持続的発展を応援することを目的としています。
たとえば、ブランド力を高めたい、商品を宣伝したい、ホームページを開設したいといった目的を持った小規模事業者が補助金を活用できる制度となっています。小規模事業者持続化補助金も「一般型」と「低感染リスク型ビジネス枠」の2つに分けられています。
「一般型」は原則50万円を上限(補助率2/3)に補助する
「一般型」は補助上限が50万円、補助率は2/3です。主に下記のような取り組みが補助対象となります。
- 店舗の改装
- チラシの作成
- 広告掲載
「一般型」には加点要件があり、事業計画期間において「給与支給総額の年率平均を増加させる」「地域別最低賃金よりも事業場内最低賃金を増加させる」などを計画している、「jGrantsによる電子申請をする」などが加点要件となっています。
「低感染症リスク型ビジネス枠」は上限100万円(補助率3/4)で支援する
ポストコロナ社会に対応したビジネスモデルへの転換が求められる中、新たに「低感染症リスク型ビジネス枠」が設けられました。補助上限100万円、補助率は3/4となっています。補助対象の例は下記の通りです。
- オンライン化の為のツール・システムの導入
- ECサイト構築費
また、「低感染症リスク型ビジネス枠」では、感染防止対策費の補助対象経費のうち1/4(最大25万円)を上限に支援を受けることもできます。
さらに、緊急事態宣言再発例による特別措置も実施されています。令和3年1~3月のいずれかの月の売上高が、前年あるいは前々年の同月比で30%以上現減少している場合、補助金総額に占める感染防止対策費の上限が1/4以内(最大25万円)から1/2以内(最大50万円)へと引き上げられます。
IT導入補助金の特徴
次に、IT導入補助金について説明をいたします。
中小企業・小規模事業者のITツール導入を支援する
「IT導入補助金」は中小企業や小規模事業者を対象とした支援制度です。企業におけるITツールやテレワークツールの導入を支援する制度です。業務効率化を図り、生産性の向上を支援するために設けられました。
たとえば、バックオフィス業務のための効率化を図る、データを活用して顧客を獲得するなどでITツールを導入する際に補助金を受けることができます。対象となる業種は幅広く、飲食、宿泊、運輸、小売・卸、製造業、建設業などが対象です。
最大450万円まで補助する
IT導入補助金は「通常枠」に加えて「低感染リスク型ビジネス枠」、「テレワーク対応類型」が設けられています。それぞれの補助額や補助率、補助対象となる経費は下記の通りです。
事業類型 | 補助下限額・上限額 | 補助率 | 補助対象経費 |
通常枠(A類型) | 30万~150万円未満 | 1/2 | ソフトウェア、クラウド利用費、専門家経費など |
通常枠(B類型) | 150万~450万円 | 1/2 | |
低感染リスク型ビジネス枠(C類型) | 30万~450万円 | 2/3 | 上記に加えて、パソコン・タブレットなどのレンタル費用が対象 |
テレワーク対応類型(D類型) | 30万~150万円 | 2/3 |
低感染リスク型ビジネス枠は複数のプロセスにおいて非対面化・連携を促進して生産性向上を図るためのITツールの導入を支援する枠です。テレワーク対応類型は生産性向上を目的としてテレワーク環境を整備するためのクラウド型のITツール導入を支援します。
加点要件として、事業計画期間において「給与支給総額が年率平均1.5%以上向上する」「事業場内最低賃金が地域別最低賃金+30円以上である」などがあります。
「事業再構築補助金」の特徴
最後に、新しく設けられた大型補助金「事業再構築補助金」についてその特徴を説明します。
中小企業と中堅企業の事業再構築を支援する
事業再構築補助金は中小企業と中堅企業を対象に支援する制度です。新分野展開や業務転換、事業再編、あるいはこれらの取り組みに通じた規模の拡大を目指す企業や団体を幅広く支援します。
最大1億円の補助
事業再構築補助金では100万円から、最大で1億円の補助を受けることができます。中小企業には「通常枠」と「卒業枠」、中堅企業には「通常枠」と「グローバルV字回復枠」が設けられているのが特徴です。支援内容の詳細は下記の通りです。
対象企業 | 補助額 | 補助率 |
中小企業(通常枠) | 100万円~6,000万円 | 2/3 |
中小企業(卒業枠) | 6,000万円超~1億円 | 2/3 |
中堅企業(通常枠) | 100万円~8,000万円 | 1/2(4,000万円超は1/3) |
中堅企業(グローバルV字回復枠) | 8,000万円超~1億円 | 1/2 |
中小企業の「卒業枠」は400社限定です。事業計画期間内において、組織再編、新規設備投資、グローバル展開のいずれかを果たし、資本金または従業員を増やして中堅企業に成長する事業者向けの特別枠となっています。
「グローバルV字回復枠」は100社限定の枠です。以下の要件をすべて満たした中堅企業を支援します。
- 直前6ヶ月のうち任意の3ヶ月において合計売上高がコロナ以前の同3ヶ月と比較して15%以上減少している
- 補助事業終了後3~5年で付加価値額あるいは従業員一人あたり付加価値額が年率5.0%以上の増加を達成している
- グローバル展開を果たす事業を行っている
緊急事態宣言特別枠がある
グローバルV字回復枠の要件を満たしていて、なおかつ令和3年1~3月のいずれかの月において売上高が対前年または対前々年の同月比で30%以上減少している場合に利用できます。補助額や補助率は下記の通りです。
従業員数 | 補助額 | 補助率 |
従業員数5人以下 | 100万円~500万円 |
中小企業3/4 中堅企業2/3 |
従業員数6~20人 | 100万円~1,000万円 | |
従業員数21人以上 | 100万円~1,500万円 |
応募要件について
事業再構築補助金の応募要件は下記のすべてを満たすことです。
- 申請直前6ヶ月のうち任意の3ヶ月において合計売上高がコロナ以前の同3ヶ月と比較して10%以上減少している
- 認定経営革新等支援機関や金融機関と共に事業計画を策定して、一体となって事業再構築に取り組む
- 補助事業終了後の3~5年で付加価値額の年率平均3.0%以上増加、あるいは従業員一人当たり付加価値額の年率平均3%以上増加の達成
3番目の条件については、これを実現することを目指した事業計画を立てる必要があるということです。目標未達の場合の補助金返還ペナルティが課せられる可能性もあります。
補助対象となる経費の例
事業再構築補助金の活用例は下記のようなものがあります。
- 建物費、建物改修費、設備費、システム購入費、外注費
- 研修費、技術導入費用
- 広告宣伝費、販売促進費
- 最大で1億円まで補助を受けられる
- 補助率が最大2/3
- コロナで苦しい多くの中小企業が対象となる
- 交付決定までに時間がかかることが予想される
- 収益性を期待できる事業である点も審査される
- 目標未達で補助金返還のペナルティがあるかもしれない
たとえば、新たにオンライン形式によるヨガ教室の運営をするためのシステム購入費、新たに始めた食料の宅配サービスを周知させための広告宣伝費、新たに化粧品の製造・販売を開始するための設備費などが考えられます。
事業再構築補助金のメリットとデメリット
事業再構築補助金にはどんなメリットやデメリットがあるのか説明します。
事業再構築補助金のメリット
事業再構築補助金のメリットには以下のような点があげられます。
事業再構築補助金は大きなビジネスの転換を応援するための制度であり補助額は高額です。最大で1億円まで補助を受けることができ、補助率も最大2/3のため、ビジネス転換にかかる負担を大きく軽減できます。コロナで売上高が減少する中小企業を対象としているため、コロナ禍で苦しんでいる企業にとって嬉しい制度です。
事業再構築補助金のデメリット
事業再構築補助金のデメリットには以下のような点があげられます。
事業再構築補助金は審査を受ける必要があります。その際には事業計画を提出して、一つずつ書類を丁寧に確認することから多くの時間がかかると予想されます。交付まで半年近くかかるとされています。
また、要件として収益性が求められています。付加価値額の年率平均3.0%以上増加、あるいは従業員一人当たり付加価値額の年率平均3%以上増加を見込める事業を提案できないと審査に落ちるかもしれません。たとえコロナで売上が落ちていて苦しい企業でも、将来性のある事業を提案できないと交付されない制度です。
目標未達で補助金返還のペナルティがあるかもしれない点も注意しましょう。詳しい点についてはまだ正確な情報が出ていません。それでも、目標未達で補助金の一部返還を求められる可能性があるため注意しましょう。
事業再構築補助金と三大補助金の比較
つぎに、事業再構築補助金と三大補助金の比較をしてみたいと思います。
最大補助額は事業再構築補助金が最も高い
最大補助額を比較すると事業再構築補助金の1億円が最も高額です。ものづくり補助金はビジネスモデル構築型が最大1億円ですがこれは要件が限られていて、それ以外の枠は1,000万円から3,000万円となっています。事業再構築補助金は一般枠でも6,000万円が上限のため、三大補助金よりも高額の支援を受けられる制度です。
事業再構築補助金は、三大補助金よりもさらに大きな改革を応援することを目的としています。そのため、補助額が高額に設定されているのです。
事業再構築補助金は補助対象となる経費の幅が広い
事業再構築補助金は対象となる経費の幅が三大補助金よりも広く設定されています。建物費や設備費、システム購入費といったものに加えて、研修費や広告宣伝費、販売促進費も補助対象です。新規事業に関する主要経費(建物費や設備費など)に加えて関連経費(研修費や広告宣伝費など)も幅広く設定されている点が、三大補助金との違いといえます。
審査基準は事業再構築補助金が一番厳しい
事業再構築補助金は補助額が高く設定されていて、補助対象となる経費の幅が広いため、審査は三大補助金よりも厳しくなります。高い収益性が求められていて、目標を達成できる有効な事業計画を立てることができないと審査で落とされる可能性があるのです。
事業再構築補助金は補助事業終了後に5年間の年次報告が必要
事業再構築補助金は補助事業を終えてからも5年間にわたって年次報告が必要です。経営状況などについて詳細な報告を欠かさず行わなければいけません。
小規模事業者持続化補助金とIT導入補助金は補助事業終了後に実績報告書を提出すれば事業は完了します。ただし、ものづくり補助金は事業再構築補助金と同様に5年の年次報告が求められます。
まとめ
事業再構築補助金は新規事業や事業規模拡大などを応援する新制度であり、最大1億円を補助し、主要経費だけではなく関連する経費も幅広く支援するのが魅力な制度です。三大補助金と比較すると、企業のより大きなビジネス展開を支援する制度だと言えるでしょう。
補助金ごとに利用できる範囲や、制度の違いがあるため、どの補助金が自社の事業にあっているかよく検討してから申請すると良いでしょう。
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