「IT導入補助金とは|5分で理解!類型や補助額、申請方法」

事業を営む上で、資金調達手段として押さえておきたいのが「補助金」。
さまざまな種類のある補助金の中でも今回は、自社のIT化・デジタル化を進める際に有効な「IT導入補助金」について取り上げます。

顧客管理ツールや営業支援ツール、テレワークに向けたシステム構築など、非常にさまざまなツールの自社導入に活用できるIT導入補助金ですが、補助対象となるツールはあくまでも、「“IT導入支援事業者”が取り扱っているツールのみ」という注意点も。

本記事ではそんな「IT導入補助金」に関する注意点に加え、類型ごとの補助額や補助率、申請に向けたフローなどをまとめて解説していきます。

自社のIT化・デジタル化に向けツールの導入を検討している事業者の方、さらなる事業拡大のため何か有効なツールは無いか探している事業者の方は、ぜひ本記事を参考に、補助金の申請をご検討ください。

<目次>
1. IT導入補助金とは
・補助対象について
2. IT導入補助金の類型・補助額
①通常枠(A・B類型)
②デジタル化基盤導入類型
③複数社連携IT導入類型
④セキュリティ対策推進枠
⑤商流一括インボイス対応類型
3. 申請までの流れ
①「IT導入支援事業者の選定」「ITツールの選択」
②「gBizIDプライム」アカウントの取得・「SECURITY ACTION」の実施
③「みらデジ経営チェック」の入力
④交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)
⑤ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施)
⑥事業実績報告
⑦補助金交付
⑧事業実施効果報告
4. まとめ

 

IT導入補助金とは

IT導入補助金とは、中小企業・小規模事業者などに対し、それぞれの課題やニーズに沿ったITツールの導入を支援するための補助金です。
具体的には、「顧客情報を効率的に管理したい」「バックオフィスの作業の無駄を省きたい」「自社をテレワークできる環境にしたい」「ECサイトを立ち上げたい」などといったニーズに応えるツールを、自社導入する場合に有効な補助金。

IT導入補助金の「ITツール」とは、パッケージソフトの本体費用クラウドサービスの導入・初期費用などを広く指しており、導入費用に頭を悩ませている事業者にとっては非常にありがたい制度であると言えます。

補助対象について

そんなIT導入補助金ですが、どんな事業者でも対象となるわけではありません。
補助対象になるには、主に次の要件を満たす必要があります。詳しくはこちらにてご確認ください。※以下、通常枠(A・B類型)の場合

  • 常時使用する従業員が20人以下である「小規模事業者」、もしくは指定された定義に該当する「中小企業」であること(定義は、こちらのp.6の表に掲げる通り)
  • 交付申請時点において、日本国内で法人登記(法人番号が指定され国税庁が管理する法人番号公表サイトにて公表されていること)され、日本国内で事業を営む法人、または個人であること
  • 交付申請の直近月において、申請者が営む事業場内最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であること
  • 国および中小機構、独立行政法人といった他の補助金などと重複する事業については、補助事業の対象として含んでいないこと
  • 「gBizID プライム」を取得していること、また「SECURITY ACTION」の「★ 一つ星」又は「★★ 二つ星」いずれかの宣言を行うこと(詳しくは後述
 

IT導入補助金の類型・補助額

IT導入補助金には、目的に応じた5つの枠組みがあります。
自社の状況がどの枠にあてはまるのか、あるいはどの枠が自社にとって有効なのかを確認・検討し、申請していきましょう。

①通常枠(A・B類型)

「業務のデジタル化」を目的としたソフトウェアや、システムの導入をしたい場合に有効な類型です。
具体的には、CRM(顧客管理)ツールSFA(営業支援)ツールといった業務プロセスに関するものに加え、各種データ連携ツールや分析ツールなどが対象となります。

<導入例>
宿泊業:クラウド型ホテル管理システムを導入することで、遠隔地からリアルタイムで空室管理・データ分析が可能になり、作業効率アップ
卸売業:通販管理業務の受注処理から伝票発行、販売管理までトータルでDX化するITツール導入で、業務効率化と売上アップを実現

補助額はA類型の場合は5万円以上150万円未満、B類型の場合は150万円以上450万円以下で、どちらも補助率は1/2以内となっています。

②デジタル化基盤導入類型

インボイス制度下における企業間取引のデジタル化推進を目的とした類型で、会計ソフト受発注ソフト決済ソフトECソフト、そしてPCやタブレット、プリンターなどのハードウェアに補助対象を特化しています。
ソフトウェアだけでなくハードウェアも対象経費として認められるこの枠は、補助金としても非常に珍しく、人気の高い類型です。

補助額はソフトウェアの場合、導入するITツールが「会計」・「受発注」・「決済」・「EC」の機能を1機能以上有する時補助率3/4以内(下限なし)〜50万円以下「会計」・「受発注」・「決済」・「EC」の機能を2機能以上有する時補助率2/3以内50万円超350万円以下となります。
一方ハードウェアの場合、PC・タブレットなどで10万円以下、レジや券売機で20万円以下、どちらも補助率は1/2以内となっています。

③複数社連携IT導入類型

地域DXの実現や生産性向上のため、業務上つながりのある「サプライチェーン」や、特定の商圏で事業を営む「商業集積地」に属する複数の中小企業・小規模事業者などが集まり、連携してITツールを導入する、という取り組みを支援する類型です。

補助額・補助率について詳しくはこちらをご確認ください。

④セキュリティ対策推進枠

昨今高まるサイバー攻撃のリスクを低減するための、セキュリティ対策強化支援類型です。
補助額はサービス利用料の1/2以内で、5万円以上100万円以下となっています。

⑤商流一括インボイス対応類型

取引関係における発注者が、インボイス制度対応のITツール(受発注ソフト)を導入し、当該取引関係における受注者である中小企業・小規模事業者などに対して無償でアカウントを供与して利用させる、といった場合を対象とした枠です。

補助額は、中小企業・小規模事業者が申請する場合は2/3以内の補助率、その他事業者が申請する場合は1/2以内の補助率で、(下限なし)~350万円以下となっています。

 

申請までの流れ

ここまで、IT導入補助金の類型や補助額について解説しました。
申請したい類型が決まったら、次はいよいよ申請です。ここからは申請をおこなう前に確認すべきことや大まかな申請の流れを解説していきます。

①「IT導入支援事業者の選定」「ITツールの選択」

補助金の交付申請をおこなう前に、まずは自社の業種や事業規模、経営課題に沿って、IT導入支援事業者と導入したいITツールを選定しなくてはなりません。
IT導入補助金で申請できるツール、つまり自社に導入できるツールはあくまでも「“IT導入支援事業者”が取り扱っているツールのみです。
したがって、気に入ったツールを自由に選択できるわけではないという点だけ念頭に置いておきましょう。

IT導入支援事業者・ITツール(コンソーシアム含む)検索こちらからおこなえます。

②「gBizIDプライム」アカウントの取得・「SECURITY ACTION」の実施

「gBizID」ホームページより、gBizIDプライムアカウント(ID・パスワードなど)の取得をおこなっておきましょう。

なおgBizIDプライムアカウントID発行までの期間は、おおむね2週間となっているため、早めの申請手続きが重要です。

また、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が実施する「SECURITY ACTION」の宣言が必要になります。この宣言は、中小企業・小規模事業者等自らが、情報セキュリティ対策に取組むことを自己宣言する制度で、「★一つ星」または「★★二つ星」を宣言する事を要件としています。詳しくはこちらからご覧ください。

③「みらデジ経営チェック」の入力

IT導入補助金2023より、「みらデジ」におけるみらデジ経営チェック」を交付申請前におこなった事業者であることが申請要件となっています。

みらデジの「新規利用者登録」画面より、gBizIDプライムアカウントを入力連携し、事業者登録をおこないます。そして、みらデジの事業者マイページへログインし、「みらデジ経営チェック」を実施してください。(gBizIDプライムアカウントとの連携は必須)

「みらデジ経営チェック」の画面で表示された項目全てに回答し、マイページ下部に「みらデジ経営チェック結果」が表示されたら、完了となります。

④交付申請(IT導入支援事業者との共同作成・提出)

IT導入支援事業者との間で話し合いを進め、交付申請の事業計画を策定します。
この時IT導入支援事業者側が、導入するITツール情報、事業計画値を入力する必要があります。

⑤ITツールの発注・契約・支払い(補助事業の実施)

交付申請を完了し、事務局から「交付決定」を受けた終わったタイミングで、ITツールの発注・契約・支払いなどを実施します。

⑥事業実績報告

補助事業の完了後、実際にITツールの発注・契約、納品、支払いなどをおこなったことが分かる証憑を提出します。証憑の提出は、以下の流れで実施しましょう。

(1)中小企業・小規模事業者などが「申請マイページ」から事業実績報告に必要な情報の入力および証憑の添付をおこない、事業実績報告を作成する
(2)事業実績報告が作成された後、IT導入支援事業者が内容の確認および必要情報の入力をおこなう
(3)最終確認後、中小企業・小規模事業者などが事務局に事業実績報告を提出する

⑦補助金交付

事業実績報告が完了し、補助金額が確定すると「申請マイページ」で補助額を確認できるようになります。その内容を確認した後に補助金が交付されます。

⑧事業実施効果報告

事業実施効果報告は、定められた期限内に補助事業者が「申請マイページ」より必要な情報を入力し、IT導入支援事業者の確認を経て、提出します。

 

まとめ

ここまで、IT導入補助金の概要をはじめ、類型ごとの補助額や補助率、申請に向けたフローなどを解説してきました。

顧客管理ツールや営業支援ツール、テレワークに向けたシステム構築など、非常にさまざまなツールの自社導入に活用できるIT導入補助金。作業の無駄を省くだけでなく、業務プロセスの変革、データの蓄積もおこなうことができるITツールは、企業成長の大きな起爆剤になるでしょう。

補助金申請の際は、必要書類の多さや細かなルールに、はじめは戸惑うことが多いかもしれません。自社はどの枠組みで申請するのが適しているのか判断できず、困ってしまう場面もあるでしょう。

株式会社樫乃屋では、IT導入補助金の申請サポートをおこなっています。様式の記入方法がいまいち理解できず時間がかかりすぎてしまう、細かなルールがありすぎて混乱してしまう方は、ぜひ一度ご相談ください。