「事業再構築補助金」とはどういう補助金なのか?詳しく説明いたします。

  1. 1. 概要

長期化するコロナ禍において、従来のビジネスモデルが立ちいかなくなる事業者も少なくありません。また、仮にコロナ禍が収束した場合であっても、コロナ禍を通じて人々の生活様式が変容したことにより、コロナ禍の発生前と同じビジネスモデルでは通用しなくなる可能性もあります。そのため、新分野への進出、業態転換、事業・業種転換を行い、事業の抜本的な改革に着手する事業者も増えています。

事業再構築補助金は、このような状況を受け、ポストコロナ・ウィズコロナの時代の経済社会の変化に対応するため、中小企業等の思い切った事業再構築を支援し、日本経済の構造転換を促すことを目的に創設された新しい補助金制度です。

具体的には、中小企業等が新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行うために必要となる建物の修繕費用、設備購入費用、システム導入費用といった設備投資資金を支援するものです。

2021年3月に第一回の公募が開始される予定であり、その後も今年中に複数回の公募が予定されています。

  1. 2. 支援対象となる事業者

事業再構築補助金の支援対象は、①法律上の中小企業として扱われる事業者(法人又は個人)及び②中小企業には該当しないものの中堅企業に該当する事業者です。具体的には、下表をご参照下さい。

  1. 3. 補助対象となる経費

事業再構築補助金の補助対象は、①「主要経費」とされる設備投資関連の経費及び②「間接経費」とされる新規事業の開始に必要な経費です。但し、従業員の人件費、不動産を新しく取得するための費用や商品の原材料費等は補助の対象外です。また、フランチャイズ化も事業再構築の手段としては認められますが、フランチャイズ加盟料は補助の対象外です。

具体的には、下表をご参照下さい。

  1. 4.補助される金額

事業再構築補助金は予算額が1兆1485億円に上る非常に大規模の補助金プログラムです。中小企業又は中堅企業の区分ごとに通常枠と特別枠(中小企業を対象とする「卒業枠」、中堅企業を対象とする「グローバルV字回復枠」)が設定されています。

通常枠であれば、中小企業は最大6,000万円、中堅企業は最大8,000万円、特別枠である卒業枠やグローバル枠であれば、最大1億円が支給される可能性があり、潤沢な予算を生かして補助額も高額となっています。

卒業枠は、事業計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、中小企業から中堅企業へ成長する中小企業向けに通常枠に比して高額の補助額が設定されるものです。但し、支給対象は400社に限定されます。

また、グローバルV字回復枠は、以下の3要件を全て満たす中堅企業向けに設定されるものです。但し、支給対象は100社に限定されます。

・直前6か月間のうち任意の3か月の合計売上高がコロナ以前の同3か月の合計売上高と比較して、15%以上減少していること

・補助事業終了後3~5年で付加価値額又は従業員一人当たり付加価値額の年率5.0%以上増加の達成を見込む事業計画を策定すること

・グローバル展開を果たす事業であるという条件を全て満たすこと

尚、卒業枠又はグローバルV字回復枠で不採択であった場合に、自動的に通常枠での審査に切り替わることはない点に留意が必要です。加えて事業再構築補助金は、1法人につき1つの枠にしか応募することができないため、通常枠と卒業枠又はグローバルV字回復枠を併願することはできない点についてもご留意ください。

通常枠、卒業枠及びグローバルV字回復枠の補助額と補助率は下表のとおりです。

さらに、通常枠の申請条件を満たした事業者のうち、緊急事態宣言により影響を受けた事業者に対しては、中小企業であるか中堅企業であるか、その所在する地域や業種を問わず、「緊急事態宣言特別枠」という、前述の通常枠に対して補助率を引き上げるという優遇措置が用意されています。そして、緊急事態宣言特別枠が不採択となった場合であっても、通常枠の審査において加点措置を受けることができます。

緊急事態宣言により影響を受けた事業者とは、具体的には、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、令和3年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少している事業者を指します。

緊急事態宣言枠については、下表のとおり、従業員数により補助額と補助率が設定されています。

尚、緊急事態宣言特別枠に不採択となった場合であっても、自動的に通常枠で再審査されるため、まずは緊急事態宣言特別枠に応募することで、採択率を高めることが可能とされています。

  1. 5. 申請要件

事業再構築補助金を申請するためには、通常枠の場合であっても、以下の3要件を満たす必要があります。

① 売上高の減少: 申請前の直近6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、コロナ以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少していること

② 事業再構築への取り組み: 事業再構築指針に沿った新分野展開、業態転換、事業・業種転換等を行うこと

③ 認定経営革新等支援機関と連携の上で、事業計画を策定すること

要件③における認定経営革新等支援機関とは、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識を生かして中小企業等へ支援を行う専門家として、経済産業大臣が認定した商工会議所、金融機関、公認会計士、税理士及び中小企業診断士を指します。認定経営革新等支援機関の一覧は中小企業庁のホームページ(以下URL)より確認できます。

【URL】https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/nintei/kikan.htm

尚、申請する補助金額が3,000万円を超える場合は、認定経営革新等支援機関に加えて、金融機関にも事業計画の策定に関与してもらう必要があります。そのため、認定経営革新等支援機関としての認定を受けた金融機関に相談するとスムーズに進むと考えられます。

そして、無事に申請が採択されるためには、この要件③に関して、合理的で説得力ある事業計画を策定することが特に重要になるといわれています。まず、前提として、以下の要件を満たす事業計画であることが必要です。

・補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均を3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加させることを見込む、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均を3.0%(同上5.0%)以上増加させることを見込むこと

注:付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足したもの

更に、詳細は、今後公表される公募要領に示されるものの、概ね以下の内容を事業計画に盛り込むが期待されています。

・現在の事業、その強み・弱み、その機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性

・事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)

・事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法

・実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む)

・地域経済への貢献、イノベーションの促進

  1. 6. 補助金受給までの流れ・受給後のモニタリング

無事に申請が採択された後、実際に補助金を受給するまでの流れは下表のとおりです。

まず、申請の採択を受けた事業者で補助金の交付申請を行います。そして、交付決定がなされた後、約1年間が補助事業対象期間となり、この間に事業者は前述3章で述べた補助対象となる経費を支出します。

そして、実際に補助対象となる経費を支出した後に、当該実績を報告しますと、行政側で確定審査と呼ばれる補助額の決定手続が行われ、それに基づき、事業者に補助金が支払われます。

留意点としては、補助金を受給して終わりではない点です。具体的には、補助金の受給後から5年間が事業計画期間兼フォローアップ期間として設定され、事業者から行政に対して、①事業者の経営状況、②再構築事業の事業化状況、③補助金を活用して購入した資産について、補助金交付要綱等に沿った管理状況、④会計検査への対応等を毎年報告することが求められます。

仮に①事業計画期間内に事業を継続できなくなった場合、②中小企業向け卒業枠(前述4章ご参照)で補助金を受給していたものの、5年間の事業計画期間終了後、正当な理由なく中堅企業へ成長できなかった場合、及び、③中堅企業向けグローバルV字回復枠(前述4章ご参照)で補助金を受給していたものの、予見できない大きな事業環境の変化に直面するなどの正当な理由なく付加価値目標が未達の場合、補助金の一部返還が求められる想定です。

また、当然ながら、不正受給に対しては補助金の返還や法令に基づく罰則が予定されています。

尚、事業計画の策定に関与した認定経営革新等支援機関に対しては、フォローアップ期間中も継続して事業者を支援することが想定されています。そのため、事業者側で認定経営革新等支援機関の選定を行う際には、長期的な付き合いを念頭に置くべきといえます。

  1. 7. 補助対象となる経費の支出に関する事前着手制度

前章6.で述べたように、補助金の申請が採択され、かつ、交付決定を受けた上で、事業者側で補助対象となる経費を支出するのが原則です。一方で、例外として「事前着手制度」と呼ばれる制度が予定されています。当該制度を活用すれば、申請の採択前の段階で経費を支出し、仮に申請が採択されれば、事前に支出した経費も補助対象となります。しかし、結果的に申請が不採択となった場合には、事業者が事前に支出した経費は一切補助されないこととなります。そのため、当該活用にあたっては、十分留意する必要があります。

  1. 8. 申請方法

事業者自身が申請主体となり、窓口や郵送での提出ではなく、「jGrants」というシステムによる電子申請を行うことが必要です。そして、電子申請には「GビズIDプライムアカウント」というIDの取得が前提となります。

当該「GビズIDプライムアカウント」の取得は、以下のURLより行うことができます。

【URL】 https://gbiz-id.go.jp/top/

必要事項を記載し、必要書類を郵送するという作業が必要であり、郵送から発行まで2~3週間を要する場合もあるため、早めの対応が望ましいです。

株式会社樫乃屋では、事業再構築補助金の申請を検討されている企業・個人事業主の方のサポートを行なっております。事業再構築補助金にご興味をお持ちの方は、お気軽にお問い合わせください。