「小規模事業者持続化補助金」というものがあるのは知っているけれど、うちの事業ではどのように活用すれば良いのかわからない。こんなことでお困りではありませんか?
小規模事業者持続化補助金は、販路の開拓や拡大に必要な費用を補助するものですが、具体的にどのような経費が対象となるのか少しイメージしづらいですよね。
そこで、本記事では補助金の活用事例を「飲食業」「小売業」「サービス業」「製造業」「宿泊業」の業種別に紹介します。
これを読んで、ご自身の事業でどう活用するかイメージしていただければ幸いです。
小規模事業者持続化補助金のおさらい
まずは、小規模事業者持続化補助金の制度について簡単におさらいしたいと思います。
すでにこの補助金について熟知しているという方はこの章を飛ばして、次の活用事例の紹介からお読みください。
補助金の概要
小規模事業者持続化補助金は、経済産業省が行なっている「中小企業生産性革命推進事業」のうちの一つです。
この事業はその名の通り、中小企業の生産性を向上させることが目的なのですが、それを金銭的に支援するために3つの補助金が用意されています。
その3つが「ものづくり補助金」「IT導入補助金」「小規模事業者持続化補助金」です。
「ものづくり補助金」「IT導入補助金」の詳細については、こちらの記事(https://kashinoya.co.jp/news/497)で解説していますので、ご興味があれば併せてご覧ください。
さて、小規模事業者持続化補助金は「販路の開拓・拡大」に取り組む際に活用できます。
具体的には、以下の経費が補助の対象です。
①機械装置等費、②広報費、③展示会等出展費、④旅費、⑤開発費、⑥資料購入費、⑦雑役務費、⑧借料、⑨専門家謝金、⑩専門家旅費、⑪設備処分費、⑫委託費、⑬外注費
補助金の対象者
小規模事業者持続化補助金の対象者は「小規模事業者」です。
ここでの「小規模事業者」の定義は、
・商業・サービス業(宿泊・娯楽業を除く)は、常時使用する従業員の数が5 人以下
・宿泊・娯楽業は、常時使用する従業員の数が20人以下
・製造業その他は、常時使用する従業員の数が20人以下
の事業者とされています。
補助金の種類
小規模事業者持続化補助金には、「一般型」と「低感染リスク型ビジネス枠」の2種類があります。
まず、「一般型」は、販路開拓や生産性を向上させるための取組に必要な費用の一部を支援するものです。要した費用の2/3が補助されますが、上限は50万円までとなっています。
次に、「低感染リスク型ビジネス枠」は、ポストコロナ時代へ向けた新たな取組やウイルス感染防止対策に必要な費用の一部を支援するものです。要した費用の3/4が補助され、上限は100万円までとなっています。
申請方法
小規模事業者持続化補助金を申請するにあたっては、まず事業計画書を作成します。
計画書が完成したら、地域の商工会議所(または商工会)へ行って、内容を確認してもらいます。
その後、経済産業省の補助金申請システムである「jGrants」を使って電子申請をすれば、手続き完了です。
小規模事業者持続化補助金の活用事例
ここからは、小規模事業者持続化補助金の活用事例を業種別に解説していきます。
今回紹介するのは、
・飲食業:和食屋でテイクアウトを始める場合
・小売業:花屋でECサイトを始める場合
・サービス業:個人指導塾でオンライン講義を始める場合
・製造業:家具屋でオーダーメイド本棚の受注を始める場合
・宿泊業:旅館で外国人向けサービスを強化する場合
の5つの事例です。
あなたの会社の事業に最も近いものから、ご覧ください。
和食屋でテイクアウトを始める
まずは、飲食業の事例として、和食屋でテイクアウトを始める場合を想定します。
最初にテイクアウトの戦略を練るために、コンサルタントに相談するとしましょう。このとき、コンサルタントに支払う専門家謝金も補助の対象となります。
戦略が決まったら、テイクアウト用の弁当メニューの考案です。参考書籍を購入し、自分の店のメニューをどのように組み合わせて弁当にするか考えていきます。メニューが決まったら、それに最適な容器の形を決めて業者へ発注することになるでしょう。
このような弁当の開発に要した費用は、書籍購入費や容器の外注費も含めて補助の対象となります。
メニューが決まったら、次は販売システムの構築です。
ここでは、来店前にインターネットで注文できるようにして、来店後スムーズに弁当をお渡しできるようにするとしましょう。そのために、まずは店のホームページをリニューアルして、オンラインで事前注文をできるようにする必要があります。
これに加えて、店内にテイクアウト専用カウンターを設置すれば、よりスムーズに商品の提供ができます。また、Uber Eatsや出前館などのデリバリーサービスに登録すれば、さらに売り上げを伸ばすことができるでしょう。
ここで要した、「ホームページの改修費」「カウンター新設のための店内改修費」「デリバリーサービスへの登録費」は補助金の対象です。
さて、弁当のメニューも決まり、販売のための準備も整いました。あとは、新しく弁当を始めたことの広報をしていきましょう。
インターネットを使った広報では、店のホームページやSNSで宣伝することはもちろん、リスティング広告を活用するという手もあります。また、店舗に来てくれた方へアピールするために、看板を作って設置したり、店の前にのぼりを出したりするのも効果があるでしょう。
近隣住民への広報として、チラシを作成してポスティングすることも効果的だと思います。
さらには、地元のミニコミ誌や新聞の地域欄に広告を載せてもらうなど、メディア戦略にも力を入れるべきです。
このような広報に要した費用も補助の対象となります。
以上のように、小規模事業者持続化補助金の対象となる範囲はとても広いです。あなたのお店でもこの補助金を活用できる部分があると思いますので、是非ともご検討ください。
花屋でECサイトを始める
続いては、小売業の事例として、花屋でECサイトを始めるという事例を想定します。
今回は今まで扱っていなかった「プリザーブドフラワー」を作り、それをECサイトで販売していくことにします。
早速、商品となるプリザーブドフラワーの制作から取り掛かります。
まずは作り方を学ぶために、参考書籍を購入したり、専門家のところへ勉強に行く必要があるでしょう。もし、作成のための機材が手元にない場合には、新しく調達しなければなりません。
以上のような、プリザーブドフラワーの開発費は小規模事業者持続化補助金の対象になります。
試行錯誤を重ねて、やっと商品が完成したとしましょう。それをECサイトで売り始める前に、商品を保管しておく場所を確保する必要があります。
この時にかかる倉庫の設置費用等も、補助金の対象です。
さて、保管場所も確保できたら、次は販売するためのECサイトの立ち上げです。ここでは、自らサイトを立ち上げることは難しいので、専門業者に発注して、立ち上げ後のメンテナンスもお願いすることにします。
この外部委託費も補助対象です。
単にECサイトを立ち上げただけでは、売り上げは伸びていかないでしょう。やはり、広報も併せて考えていかなければなりません。
まず考えられるのは、自社のホームページやSNS、さらにはリスティング広告も絡めたインターネット上での広報でしょう。これに加えて、実店舗に看板やのぼりを設置しておけば、これまでのお客さんにもアピールすることができます。さらには、花の専門誌に広告を載せるなど、メディアへの掲載も大きな効果があると考えられます。
広報の他にも、Amazonや楽天などのモール店へ出店すれば、露出が増えて売り上げアップにつながるでしょう。このような広報費やモール店への出店費も補助金の対象です。
以上のように、小売店でも多くの経費が補助の対象となります。
もちろん、花屋でなくても補助金を活用することができますので、あなたのお店ではどのように利用できそうか考えてみていただければと思います。
個別指導塾でオンライン講義を始める
次に、サービス業での活用事例として、個別指導塾でオンライン講義を始めることを想定します。
まずは、生徒とビデオ通話をするためのシステムを確立しなければなりません。
Zoomなどのサービスを使って授業を行うことにした場合、有料プランへの登録費がかかれば、小規模事業者持続化補助金の対象となります。
また、オンライン授業を始めるにあたり、今までと環境が異なるため、新たに授業用教材を作成する必要があるかもしれません。そのためには、書店で参考書籍を購入したり、場合によっては専門家からノウハウを学んだりしていきます。
完成した教材を生徒に配るには、自社のホームページを改修して、そこからダウンロードできるようにしておけると便利かと思います。
以上のような「教材作成費」や「ホームページ改修費」も補助金の対象です。
最後に、オンライン授業を始めたことの広報について考えていきます。
オンライン授業ということで、やはり効果的なのは自社のホームページやSNS、リスティング広告を活用したインターネット上での広報でしょう。それに加えて、塾の建物の外壁に看板を設置したり、入り口にのぼりを立てたりすることも考えられます。
今まで利用が難しかった遠方の生徒を獲得するため、新聞や雑誌へ広告を掲載することも大きな効果があると思います。
このように、オンライン授業の広報に要した費用も補助対象です。
以上、個別指導塾のようなサービス業でも、小規模事業者持続化補助金を大いに活用できることがお分かりいただけたかと思います。
家具屋でオーダーメイド本棚の受注を始める
さて、家具を作っているような製造業では、小規模事業者持続化補助金をどのように活用できるのでしょうか。ここでは、家具メーカーが新たにオーダーメイド本棚の受注を始めた場合を想定したいと思います。
まずは、オーダーメイド本棚の開発です。参考書籍を購入したり、他社の本棚を研究したりした上で、自社のオーダーメイド本棚の設計に入ります。ここで、商品を制作するためには新しい機材を導入する必要があるかもしれません。
このときにかかる、研究・設計費や機材購入費は補助金の対象となります。
さて、オーダーメイド本棚の生産体制が整ったら、次はインターネット上で注文を受け付けられるように、自社のホームページの改修を行います。社内で対応しきれない場合には、外部にシステム改修を依頼することになると思いますが、この委託費についても補助の対象となります。
販売体制まで整えば、あとは広報をして注文を待ちます。広報の方法としては、ホームページやSNS、リスティング広告を使ったインターネット上の広報や、家具を取り扱った雑誌への広告掲載などのメディアを絡めた広報が考えられます。また、場合によっては、家具関連のオンライン展示会に出展することもあるかと思います。
これらの広報費や出展費も、補助金の対象となります。
以上、家具屋でオーダーメイド本棚の販売を始めた事例について、どのような費用が補助対象となるか見てきました。
もちろん、家具以外の製造業でも小規模事業者持続化補助金を使って販路の開拓・拡大ができますので、自分の会社ではどう活用するか、検討していただければと思います。
旅館で外国人向けサービスを強化する
最後の事例として、旅館で外国人向けサービスを強化する場合を想定したいと思います。
コロナ終息後のインバウンド増加に備えている宿泊業の方も多いのではないでしょうか?
ここで最も大切となるのは、提供しているサービスの多言語化です。まずは、自社のホームページを英語・中国語・韓国語の3ヶ国語に対応できるよう改修します。さらに、旅館の中にある案内板や食事処のメニューなど、あらゆる表示を全て多言語化する必要があります。接客するスタッフに外国語を話せる方がいないときには、音声翻訳機を導入することもあるでしょう。
これらの「ホームページ改修費」「館内表示の多言語化にかかった費用」「新機材の導入費」は、小規模事業者持続化補助金の対象になります。
多言語化が済んだら、館内施設も外国人向けに改修していかなければなりません。
その代表格がトイレです。洋式便器が少ない場合には、これを機に館内の和式便器を全て洋式に切り替えても良いかもしれません。
また、施設だけでなく、食事も多様な文化を持った方々へ配慮しなければなりません。ベジタリアンの方や宗教上の理由から食べるものに制限のある方も大勢いらっしゃるので、そういった方々へ提供できる食事メニューも用意しておく必要があります。
以上のような「施設改修費」や「食事メニューの開発費」も補助対象に含まれます。
今回のコロナ禍を受けて、旅館内でもなるべく対人接触が少なくなるような工夫をしていく必要があります。
まず考えられるのが、入口に無人検温カメラを設置すること。これにより、体温測定のための無用な接触を避けられます。また、自動セルフチェックインシステムを導入すれば、受付での接触も避けることができます。
これらのポストコロナ時代へ向けた取組も、補助金の対象となります。
もちろん、外国の方へ向けた広報も欠かせません。海外向けメディアへ広告を依頼したり、海外の旅行サイトへ掲載してもらったりすることで、外国の方への露出を増やすことができるでしょう。
他の事例と同様、これらの広報費も補助対象です。
以上ように、旅館などの宿泊業でも小規模事業者持続化補助金を活用することができます。
あとがき
この記事では、以下の5つの事例を紹介しました。
・和食屋でテイクアウトを始める場合
・花屋でECサイトを始める場合
・個人指導塾でオンライン講義を始める場合
・家具屋でオーダーメイド本棚の受注を始める場合
・旅館で外国人向けサービスを強化する場合
それぞれの事例で、幅広く小規模事業者持続化補助金を活用できることがお分かりになったと思います。
あなたの会社も、この補助金を活用して新しい販路を開拓したり従来の販路を拡大したりできると思いますので、ぜひ一度ご検討いただければと思います。
株式会社樫乃屋では補助金に関わるご相談を承っておりますので、ご不明なことがあればお気軽にご連絡ください。